三好達治

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北川冬彦君に 花ばかりがこの世で私に美しい。 窓に腰かけてゐる私の、ふとある時の私の純潔。 私の膝。私の手足。(飛行機が林を越える。) ――それから私の秘密。 秘密の花弁につつまれたあるひと時の私の純潔。 私の上を雲が流れる。私は楽しい。私は悲しくない。 しかしまた、やがて悲しみが私に帰つてくるだらう。 私には私の悲しみを防ぐすべがない。 私の悩みには理由がない。――それを私は知つてゐる。 花ばかりがこの世で私に美しい。

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