赭土山
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私は今日 裏山の小徑を歩いた
何といふ目あてもなしに 赭土山を歩き𢌞つた
歩き𢌞つた
松の林を
池のほとりを
人影もない寺の庭を
私の影は 愚かな驢馬のやうに見えた
私は少し愕いた
人生の 感情の 噫 何といふ季節であらう
淋しい臥床の中で聽く耳鳴りのやうに
蝉はどこでも啼いてゐた
蝉はしんしんと鳴いてゐた
私はしばらく草の上に坐つてゐた
そこからは海が見えた
煙の流れる海のむかふに 名も知れぬ島が見えた 山が見えた
ああその一つの古い思出
古い一つの思出の方へ
この炎天の草の上から 山峽から 今日もなほ
羽ばたくものは何だらう 愚かなことだ つまらぬことだ――
愚かなつまらぬ驢馬の影だ
それは
この草の上の私の影は
蝉はしんしんと啼いてゐた
松の林に
蝉は啼いてゐた
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