島崎藤村先生の新墓に詣づ
本文の表示
しづかなる秋の朝なり
鵯どりら空によびかひ
林より林にわたる
しづかなる秋の朝なり
百舌はまたさらに高音を
張りて啼け
世はひそかなり
こよろぎの濱のおほ波
ゆるやかにくづるるさへや
ここにして聽けばかそけし
この庭にいま陽ざしおつ
斑々とかくはさやかに
こまやかにあるはゆらぎつ
あたらしき世のうたの父
ねむります梅の木のもと
おくつきはこのおん父の
みこころのままにすがしく
つゆじもに濡れてかをれる
しら菊の花のいく輪
ほの青き香のけむりの
たちまよひなびくのみなる
丘のべの精舍の庭に
しかすがにものみな眼ざめ
朝風はかよひそめたり
空青し
海もまたかなたに青し
ものの音なべてはるかに
ここにして境はきよし
なにはなき景はさながら
似たらずやこのうたびとの
七十路の耳はみみしひ
沈默し指をむすびて
ものおもひたまふ姿に
しづかなる秋の朝なり
「よろづ世の名もなにかせん
寂寞たり身後の事」と
いふといへよろしからずや
我はただここにぬかづき
我はただここにもとほる
人の世のなべてさながら
よしとしてあげつらふなき
時をひと時――
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
島崎藤村先生の新墓に詣づの談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
島崎藤村先生の新墓に詣づに寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。
まだ解釈・感想はありません。
ログインすると解釈・感想を書けます。