ちやんちやんの歌

室生犀星

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――萩原朔太郎に―― けふ町に出で 君が愛児のため うつくしきちやんちやんを求め購ひぬ。 君が子はをんな児なれば 綾なすちりめんこそよけれと念へるなり、 その包みを抱へかへらんとすれど わが家にもあかん坊の居るべかれば 君が子のみに送り わが赤ん坊を何とておろそかに為すべき、 われは今一枚の羽二重なる あまりに派手ならざるちやんちやんを選み その包み二つを提げ 上野広小路の雑閙の中を歩めり。 人込みのなかに揉まれつつ 君とともに身搾らしく歩みたる時と 既に人の世の父たることを思ひ ぼんやりとまなこ潤み いくたび寂しげにその包みを抱き換へしことぞ。 君がまな児はわが児にくらべ 一つ上なる姉なり かく寂しきことを心に繰り返し 早や君に送らんことに心急ぎ ふたたび車上の人となる。 やがて子守唄やさしき君が家に わがちやんちやんの到くならん。

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