人をたづねて

室生犀星

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

人をたづねて淺草のうら町をあるいた 寺と寺とが隣り合つて 木がその庭から町の上に覗いてゐる 晴れた土の上には 子供が遊んでゐる その着物の紅い布などが目立つほど 寂しいうら町である 大きな寺を幾度も𢌞り 同じい小路を往つたり來たりしてゐても たづねる人の家がわからない ふしぎなほど分らない どの家にもみな女がゐて子供があり しもた家ばかりの小路つづきである さういふ家はありませんねといふ わたしのほとほと困つた顏をみてくれもしないで あるものは洗濯をし あるものは夕方の土を掃き または晝の三味線をなまめかしく弄つてゐるのである さうして私はまた同じい小路から小路へ裏町へ もとの大寺の門の前へ出るのである あたまはつかれるし こころは苛立つ とみればこれは思ひがけない寺のなかから美しい矢絣銘仙の娘が ぽつかりと水に浮くをしどりのやうに現はれてくる 木は寺の庭から覗いてゐる がつかりしてかへりかかると 公園の樂隊やどよめきがこのさびしい裏町の上におちてくる 足をとどめてその音をききいると すぐ近くでしてくるのである また元の大通りへ出ると 軌道の工事で通りは混みあつてゐる ふいと電車にのり いまあるいてきた不思議なほど靜かな町をおもひ ひとり目をつむつて搖られてゆく それゆゑ冬の日はくれやすい。

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

人をたづねての談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

人をたづねてに寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる