子供は自然の中に居る

室生犀星

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子供らは 何故に私の眼を怖がるか あらゆる正しさに 善き教へになれてゐる かれらは自分を見て怖がる 自分はそれを苦しむ 出来るだけ優しくならうとして 自分はおづおづ子供らに近づく その魂に温められに行く 子供らは自分を見てにつと微笑する あの大きな開け放した親密さに しりじりと自分はつめよる その正しさを感じたさに 神のあどけない瞬間を見たさに きたない自分をふり落す為めに あ! 思うても心は善良になる 心は清い羽ばたきをやる どんなにあの微笑が自分を慰めるか! どんなにあのあどけなさが 自分を底の底まで温めてくれることか! 子供の前で嘘は言へない 子供の前では恥かしいことだらけだ 子供は自然の中に居る 子供らはいつも私共を了解するやうに 私共をすつかりのみ込んでゐるやうに 正面から静かに私共を眺めてゐる やさしい正実で 花のやうな叡智の潜勢で ああ 寛大で みなぎり切つた大きな微笑! とてつもない自由な新鮮! お! 此のよい子供らは 私の顔を怖がつて泣くのだ けものに遭つたやうに怖がるのだ なぜに私が怖いのだ! 自分は過去で苦労をした 絶え間もない困難に打ち勝つて来た これらの傷ついた魂の根 これらのもたらす容貌のいかつさが 此の子供にまで響いて来る 此の子供の心をまで痛ましめる 子供は自分に触れることを厭ふ その清さが厭ふ お! 子供は自然の中にゐる 立派に美しく 彫り込んだやうにしつかりして そして神の瞬間にゐるのだ

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