小鳥

室生犀星

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ある日 留守の間にひとりの青年がたづねてきて 小鳥のつがひを籠にいれたまま わたしにおくつてくれた 小鳥はちひさな夫婦で 名もわからないポルトガルの種であること その人が西洋人から貰つたものであること さう言つて見知らぬ友はかへつた 粟がひと包みそへてあつた その友はへいぜい 下宿のわびしい室で この珍らしい小鳥を放し飼ひにしてゐた 玄關に出たうちのものに その籠をわたすとき 見知らぬ友は實際なつかしさうに小鳥をながめて しばらくは去らうとせず さて煙草を一本のんで ゆつくりと籠と小鳥とを眺めて 道のわるい田端の奧から歸つて行つた ときどき餌をもつてきませう 可愛がつてやつてください さう見知らぬ友が言つて去つた晩おそく 私は町からすこし醉つてかへつて 自分の室の机の上に この珍らしい小鳥を見いだした あくる日は晴れて あさの光にあてると ココア色の羽根と白いくちばしをもつた小鳥は 水をあびながら ひくい聲で くくくと啼きながらあそんでゐた ときをり次の間越しに わたしは仕事の手をやすめて その啼きごゑにききとれた 晴れた日とかかはりのある鳥類の しかもつがひで啼きいそしむ姿は寂しく わたしの目の前を去來した

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