門
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秋らしいしめりは
よく掃かれた庭にゆき亘つて
歯朶の繊葉や 菊の花らを
全きまでに美しく投影してゐた
障子の中はしんとしてゐた
ときをり本をめくる新鮮な紙のおとが
その庭にある山茶花のあたりでも聴かれた
あたかも祈るやうな
透明な幸福な
高高とした読書の声もした
あるときは手紙の一片をも
感激したらしい声で朗んだりしてゐた
深い吐息がしたり
寝台に打倒れたやうな音もしたりした
香はしきりに炷かれてゐた
雨は毎日ふつてゐた
この都会の郊外といはず
巷といはず
じめじめと永い間
ちらちらと日かげするあひまを
寂しい雪もよひのそらに降つてゐた
室のあるじのひたひは蒼ざめ
ときをり思ひつめたやうに
庭や門のあたりを掃き清めてゐた
心はゆたかに湿ほひ
やがて訪づれのある人をまつてゐた
かの女は白い額と 柔らかい手とをもつて
かれの傍らに座し語るのであつた
これらの幸福な予感は
永い年月孤独と戦ひ勝つて来た彼にとつて
再びこの世に出てゆくべき
一つの美しい安息の港でもあつた
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