山の手線

室生犀星

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停車場の粗い建物と冷たい敷石に まるい少女が立つてゐる かの女のからだのどの部分も紅い 着物も肩かけも手袋も その顏も 雪はふらないが寒いのである 誰でもうすぼんやりとレール道をながめてゐると 汽車も電車も夢のやうに見える日である 顏も着物も紅い女が つめたい敷石にひとりだけ立つてゐる みればみるほど美しい 類ひなく優しい 誰でもその女に目を遣る 冷たい玻璃戸にかこまれた或は吹きさらしの山の手線では 匂へるだけ匂つてゐる沈丁花の株が 日に蒸されて土手の上にある やがて女をのせて電車がゆく あとは敷石と玻璃だけが冷えに冷えてのこつてゐる

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