からす

永井荷風

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からす。 地獄の鳥。 月さえわたる庭にきて 蝉をな追ひそ。 合歓の葉は今しづかに眠り 合歓の花に露はかゞやく。 かなで続けし夏のしらべに 蝉はつかれていこへるを。 からす。 地獄の鳥。 汝飢ゑなば泥海の 干潟あさりて くされしものを啄め。 月夜の庭には あかるき夏のあらゆる草木 その影もろともにいこへるを。 去れ。去れ。 からす。 地獄の鳥。 STYX の河辺はるかに。

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