無題

永井荷風

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君心ありてわれを憐れまば 冀くは来りてわが門を敲くなかれ。 われ一人住むといへど 幾月日の過ぎ来しかた 思出の夢のかづ/\限り知られず。 夏冬に散る窓の落葉は 言葉なき言葉にわれとかたらふ。 うぐひすは春の行く時 遣瀬なき思ひをわれに告げ 秋雨さむき夜となれば 声をかぎりに蛼は いまはの苦しみをわれに訴ふ。 果してわれは友なきや 果してわれはさびしきや。 君わがかたくななるを怒らずば 冀くは来りてわが門を叩くなかれ。

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