秋窓風雨夕

永井荷風

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原作紅楼夢第四十五回 いたましや秋の草花しをれ果て その葉もいまは黄ばみたり。 すみわたる燈火に夜はふけやすく 見て飽かざりし窓の眺もつき果てぬ。 吹き添ふ風ふり添ふ雨のわびしさに つれなくもきのふにかはる秋のいろ。 緑やさしき木蔭の夢はとくさめて 幾夜ねられぬ憂きおもひ。 引きまはす屏風のかげ燈火かき立つれば 蝋燭のながす涙にあたり明く いとし恋しのいや増すばかり。 別れし後のさびしさ又一層の切なさや。 あはれ秋風の吹入らぬ奥庭なきや。 秋雨の音のきこえぬ窓もがな。 夜の褥重ねても重ねても肌薄く ふけ行く時計の音につれていよゝ烈しき雨の声。 宵々ごとに降りまされば 宵々ごとにさびしさのみぞ増り行く。 霧か烟か庭もせに雨は音なくふる日あり。 さびしき窓にさら/\と竹の葉鳴す夜もあり。 待てどくらせど晴れぬ空 降りつ濺ぎつはてしなき雨と涙に我心 朽ちなば朽ちよ窓の簾ともろともに。

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