春の睦言

野呂喬

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春はいらかに睦言をなげる 婦人たちは踵靴を小脇にかゝへ 去年の想ひをたづねまわる 春は舗道に光をなげる ; デパートの店頭にはなんとおびたゞしい婦人の瞳だ 飾窓に彼女達が裝て立つと生垣をつくるその瞳だ 婦人たちは一齋に胸をときめかすのだ その息づきのほのかさよ 婦人情が靑い空氣をさつさとゆく ボ ン ネ (春着の裾がひらめくではないか) いまは、 婦人たちの巧なる感情の射擊をはじめる このどよめきは街の明朗な氣流に溶けるひとの息吹だ。 あゝ、 春の睦言のぴちぴち聽こゆる春昏よ どうだ。 僕たちの胸に垂れこめ肌をくすぐる夜の霧は 見給ひ。 そつと感情を抱擁き寢室にさそう夜の感能を 春は僕らも婦人たちも夜會服に着かざつては おゝ、 ばたり〓〓窒息してゆく、 そうだ泡となる。

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