海底の凝視

小熊秀雄

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なんといふ混濁のみな底だ 俺の凝視をちから強く追ひ返す みな底の 凝視の主はだれだ。    × 砂にうづもれた 重い赤銅の壺であつたなら あをい燐光をはなせ 漆黒の 魔女の脱け毛であつたなら なよなよと 水面に浮かんでこい    × おお…俺は…お前の どす黒い水の厚さに魅せられて 心のふるひが止まらない 心のふるひが止まらない    × おお…それは しんとしたうす暗い深林の 黄昏の炎樹に なかよく抱きあつて死んでゐる 白い獣達のながす 赤い液体が 谷底の苔をつたつて海にいり 砂鉄の微粒となつて 魅力の凝視をはなすからだ    × ああ…月が出て月が出て 歪んだ月が出て 水面の皺が にやにやと笑つてゐる。 青じろく 笑つてゐる。

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