聖書は私の母でない

小熊秀雄

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わたしが激しい憤りに みぶるひを始めるとき それはあらゆる「自由」獲得の 征途にのぼつたときだ その時、私は不謹慎でなければならない 不徳でも また貪慾でもなければならぬ これらの悪い批評を歓迎する 下僕共は主人の規律を守らうとして あらゆる既存の調和と道徳を愛する 『人間が犯し得る、あらゆる不善は  いづれも皆、公然と聖書に  記されたるもののみならずや』           ――ウィリアム、ブレーク―― 聖書もまた喰ひたりない 私が犯す不善は 聖書の中に書いてないから 聖書は私の母ではない 彼は私を抱き緊めることができない 歴史はまだまだ聖書に かかれてゐない偉大な不善を われわれの手によつて犯すだらう 然もその不善は あくまで独創的な プロレタリアートのそれである。

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