都会の饑餓
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雑踏よ、都会の雑踏よ。
私は終日美しい痙攣のために身悶へし
何処といふあてもなく、
ただ足にまかせて歩み、疲労し、
到る処の街角に休息し、
呆然として、車道、人道いりみだれた、
埃りで組み立てられた十字路に、
まるで獣らしい憎しみをもつて凝視する。
都会よ、私はお前の尻尾を捕へ
お前の尻尾と共に私は転げ廻つてゐるのか。
私の帽子の上の騒音、
ああ、それは油蝉のやうにミンミン鳴く。
親愛なる雲も、
垂直に堕ちてきて私の行手を掩ふ。
街路にはしきりに足をひきずり
せはしく彷徨する人を見た。
その靴は貪婪な爪のやうに光沢あり、
それをもつてしきりに地面を掻いてゐるやうだ。
私はこれを見ると二重に苦しめられる、
私は乗物にのせられて、
都会から無人の境へそのまま
突き離されたらどんなに嬉しいだらう、
いや、私はかうして人間の渦の中に
暮してゐるのがよいのだ。
私は不意に凄然となつた。
軽く私の肩に手を触れ
その冷めたく触れたものは、
人混みの中にさつとかくれてしまつた。
私は周囲を見廻し、私は脅へ、
私は子供のやうに身ぶるひし、
私は其の場に、都会の大雑踏の
不思議な一瞬間を見た。
非常に怖ろしい勢ひをもつて、圧搾し、
それが急に天空に去つたやうに、
私は私の身体が、
真空の谿に堕ちてゆくやうに思はれた。
私は歯を思はず喰ひしばつて、
緊きしめられた空間に釘づけにされた。
その時、群衆は既に私と同じことを感じてゐた。
私の肩も、人々の肩も吐息の波を打つ、
重苦しくひとときを裁断したもの、
それは茫と霞んで白い
大きな翼の鳥のやうなもの、
都会の顔貌の一隅に降り、
またたちまち舞ひ立ち、おどろかしたもの、
それは何か、私の額を蹴つたものは何か、
若しやそれが私や人々が等しく感じてゐる
都会の饑餓といふものの正体ではないだらうか。
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