薔薇の散策

大手拓次

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

     1 地上のかげをふかめて、昏昏とねむる薔薇の唇。      2 白熱の俎上にをどる薔薇、薔薇、薔薇。      3 しろくなよなよとひらく、あけがた色の勤行の薔薇の花。      4 刺をかさね、刺をかさね、いよいよに にほひをそだてる薔薇の花。      5 翅のおとを聴かんとして 水鏡する 喪心の あゆみゆく薔薇      6 ひひらぎの葉のねむるやうに ゆめをおひかける 霧色の薔薇の花。      7 いらくさの影にかこまれ 茫茫とした色をぬけでる 真珠色の薔薇の花。      8 黙祷の禁忌のなかにさきいでる 形なき蒼白の 法体の薔薇の花。      9 欝金色の月に釣られる 盲目の ただよへる薔薇。      10 ひそまりしづむ木立に 鐘をこもらせるうすゆきいろの薔薇の花。      11 すぎさりし月光にみなぎる 雨の薔薇の花。      12 吐息をひらかせる ゆふぐれの 喘ぎの薔薇の花。      13 ひねもすを嗟嘆する 南の色の薔薇の花。      14 火のなかにたはむれる 真昼の靴をはいた黒耀石の薔薇の花。      15 くもり日の顔に映る 大空の窗の薔薇の花。      16 掌はみづにかくれ 微風の夢をゆめみる 未生の薔薇の花。      17 鵞毛のやうにゆききする 風にさそはれて朝化粧する薔薇の花。      18 みどりのなかに 生ひいでた 手も足も風にあふれる薔薇の花。      19 眼にみえぬ ゆふぐれのなみだをためて ひとつひとつにつづりあはせた 紅玉色の薔薇の花。      20 現なるにほひのなかに 現ならぬ思ひをやどす 一輪のしづまりかへる薔薇の花。      21 眼と眼のなかに 空色の時をはこぶ ゆれてゐる 紅と黄金の薔薇の花。      22 朝な朝な ふしぎなねむりをつくる わすられた耳朶色のばらのはな。      23 かなしみをつみかさねて みうごきもできない 影と影とのむらがる 瞳色のばらのはな。      24 ゆたゆたに にほひをたたへ 青春を羽ばたく 風のうへのばらのはな。      25 陽の色のふかまるなかに 突風のもえたつなかに なほあはあはと手をひらく薄月色の薔薇の花。      26 またたきのうちに 香をこめて みちにちらばふ むなしい大輪のばらのはな。      27 はだらの雪のやうに 傷心の夢に刻まれた 類のない美貌のばらのはな。      28 悔恨の虹におびえて ゆふべの星をのがれようとする 時をわすれた 内気な 内気なばらのはな。      29 魚のやうにねむりつづける 瀲灔としたみづのなかの かげろふ色のばらの花。      30 白鳥をよんでたはむれ 夜の霧にながされる 盲目のばらのはな。      31 あをうみの 底にひそめる薔薇の花、とげとげとしてやはらかく 香気の鐘をうちならす薔薇の花。      32 けはひにさへも 心ときめき しぐれする ゆふぐれの 風にもまれるばらのはな。      33 あをぞらのなかに 黄金色の布もてめかくしをされた薔薇の花。      34 微笑の砦もて 心を奥へ奥へと包んだ 薄倖のばらのはな。      35 欝積する笛のねに 去りがての思慕をつのらせる 青磁色のばらのはな。      36 さかしらに みづからをほこりしはかなさに くづほれ 無明の涙に さめざめとよみがへる薔薇の花。

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。

まだ批評・講評はありません。

薔薇の散策の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

薔薇の散策に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる