私の柱時計

佐藤春夫

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ある日、私は、ある場末の時計屋で古びた風變りな時計を一つ買つて來た。壁に掛けてから三時間以上もそれを眺めて、私は遊んだ。電燈がついてから、次のやうなものを書いた―― 私の柱時計の図 文字は喜のやうに鮮かな金 文字板は死のやうにまつ黒 ぐるりは花と葡萄葉との飾 振子と言へばたつた一房の 風に搖れるあまい葡萄の實 このよい柱時計の細工人は 無名でこそあつたがきつと エピキュラス程の賢者だつた 美しい教はつつましいから 人に知られずに三十年の間 場末の店で塵まみれだつた チクタクチクタクチクタク

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