眠れぬ者の歌

千家元麿

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夜もすがら眠る者は幸福だ。 夜と共に眠る者よ その面白さうな健康な呼吸よ 沈默の聲よ 幾多の人が集ひ寄つて さゞめき、喜ぶやうな賑やかさ 『おゝ汝は笑つて居る、何が可笑しいのか』 夜もすがら眠り得ぬ者は不幸だ 彼は病んで居る 他界の人のやうに 幸福に擽られて居る露骨な笑ひを聞き乍ら 涙の浮んだ眼を見開いて居る。 『止めよ、止めよ 其の病的な幸福を、露骨な笑ひを止めて呉れ』 不幸な人は呟けど 夜もすがら幸福は眠れる者を去らず 病める者の耳を離れず 氣がつけばます/\露骨に話し合ひ、囁き、笑ひ 誘ひ込む樣に夜は騷しく更けて行く。 (一〇、九)

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