小景(『自分は見た』収録・同題第1篇)
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今日は馬鹿に寒い、雪か霙でも降り出し相だ。
出しぬけに冬が來たのだ。
日が出かけようとして出られ無いで居る。
出かけ相にしては隱れてしまふ。
人がいそぎ足に澤山通る。女と子供が多い。
皆んな饒舌つて行く、寒いのに皆んな驚いて居る。
日が出るのを一樣に期待して居る。
母親の脊中で子供が
初めて此冬に出會つた連中だらう
未だ赤ん坊臭い泣き聲がすつかりとれない
わけのわからない聲でむづかつて行く
時々男の聲も交る。
寒いので皆んな急ぎ足だ。かけ足だ。
用を足しに家を一寸明けて出た人々と云ふ氣がする。
家の中から聞いて居ると面白い。
一しきり往來は子供と女達の聲で賑はつて。
軈てまるでちがつてしまふ。
誰も通ら無くなる。
變な氣がする。そこは通り過ぎてしまつたやうに。
人類生存の一くさりだ。
どん/\變つて行く。
(十一月七日)
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