爐邊雜興
本文の表示
散文にてつくれる即興詩
あら荒くれたる賤の山住や顏も黒し手も黒しすごすごと林の中を歸る藁草履の土にまみれたるよ
こゝには五十路六十路を經つつまだ海知らぬ人々ぞ多き
炭燒の烟をながめつゝ世の移り變るも知らで谷陰にぞ住める
蒲公英の黄に蕗の花の白きを踏みつゝ慣れし其足何ぞ野獸の如き
岡のべに通ふ路には野苺の實を垂るゝあり摘みて舌うちして年を經にけり
和布賣の越後の女三々五々群をなして來る呼びて窓に倚りて海の藻を買ふぞゆかしき
大豆を賣りて皿の上に載せたる鹽鮭の肉鹽鮭何の磯の香もなき
年々の暦と共に壁に煤けたる錦繪を見れば海ありき廣重の筆なりき
爺は波を知らず婆は潮の音を知らず孫は千鳥を鷄の雛かとぞ思ふ
たまたま伊勢詣のしるしにとて送られし貝の一ひらを見れば大わだつみのよろづの波を彫めるとぞ言ひし言の葉こそ思ひいでらるれ
品川の沖によるといふなる海苔の新しきは先づ棚の佛にまゐらせて山家にありて遠く海草の香をかぐとぞいふばかりなる
ログインすると、お気に入り登録や選集への追加ができます。
ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。
爐邊雜興の談話
疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。
まだ投稿はありません。
爐邊雜興に寄せられた作品
詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。
まだ投稿はありません。
批評・感想 0
作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。
まだ批評・講評はありません。
ログインすると批評・講評を書けます。