琵琶湖畔にたちて
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走る油鰭よみがくれに
網代の網はくぐるとも、
ゆめ洩らさじな、悲しみの
細き釣緒にさはりては。
透影しろき鱗を
柳のかげにのぞき見て、
毒ある海にあえかなる
身の薄命をおもふかな。
木葉に似たる身を寄せて、
藻屑がくれにひるがへる
若きすさみも春の日の
暮れぬる程のひまと知れ。
水際に白き小波を
薄き鰓にくだきては、
心ありげの物ずさみ、
何をかくるる吾友よ。
星の光りに影みえて、
浦づたひ行く蜑が子の
足音に響く眞砂路に、
小さき鰭をさしつけよ。
氷雨に折れし葦の葉の
春に遇ひつる心地して
汝もつめたき砂摺に、
あつき血汐や覺ゆらめ。
げに人の世は荒金の
さびをし溶かす窯なりや、
眞金のつやを見まくせば、
底の熱をあたためよ。
そこに沈める眞珠あり、
ここに香れる野花あり、
ゆくな油鰭よ、宵暗を
なに恥かしき契かは。
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