春夜

薄田泣菫

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春の光りの薄くして、 若き快樂の短かきに、 花咲く影に醉ひしれて、 酒甕叩きて歌ふかな。 花の香碎く風をあらみ、 細き眉毛を顰めつつ、 燈火にかざす少女子の 袖の心を知るや君。 花を踏みては、和らかき 踵にしめる紅色の 名殘の色をかへりみて、 暮れゆく春を惜しむかな。 脆き此世に又いつか 春を抱きて樂しまん。 せめて今宵は歡樂に、 智惠の瞳なめぐらせそ。 盃含み目を閉ぢて、 たださびしらの物思ひ、 君よ涙のせかれずば、 火影にそむけ、人知れず。

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