小木曾女の歌

薄田泣菫

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一 いまはた殘るおもかげの 夢とはなしにささやくは、 明日をも、かくや夕づけて、 峰越の路に待たまほし。 二 きのふは、御手よ淺間野の 『水無月』姫の鈴まうし、 木の間にゆらぐ鈴蘭の 美しかをりに染みましき。 三 こよひは、髮のかかりばに、 朝露しろき甲斐が根の 山した小野に咲き濡るる 十六夜薔薇の香を嗅ぎぬ。 四 路ゆきぶりに、遠つ野の 顏佳の花は摘ますとも、 小木曾の山のえぞ菫、 あえかの色もわすれざれ。

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