澤瀉の歌

薄田泣菫

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こもり沼の水銹の面に、 澤瀉のひと花ぐきや、 夏の日の光にぬれて、 息ざしのけはひ深げに。 ももとせの生命の釀し、 葉とひらき、花とくゆりて ひと夏のこころ驕りや、 こもり沼の上なだら水。 やはら風そよろの渡り、 葉はゆれぬ、花はこぼれぬ、 沼姫のほくそゑまひか、 ささら波輪形の皺み。 今しこそ胸のとろ火の もも絡み靜かに解けめ、 使ひ女の老女しろ鷺、 眠り目の夢見すがたや。 ありや、かの歸依の和魂、 あくがれの心のふかみ、 かかる日のふと現はれて、 束のまを、――また身隱るる。

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