忘れぬまみ(『泣菫詩抄』収録)

薄田泣菫

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夏野の媛の手にとらす しろがね籠、ももくさの 香には染むとも、追懷は 人のまみには似ざらまし。 伏目にたたすあえかさに、 ひと日は、白き難波薔薇 夕日がくれに息づきし 津の國の野を思ひいで。 ひと日は、うるむ月の夜に、 水漬く磯根の葦の葉を、 卯波たゆたにくちづけし 深日の浦をおもひいでぬ。

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