梟の族

高村光太郎

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――聞いたか、聞いたか ぼろすけぼうぼう―― 軽くして責なき人の口の端 森のくらやみに住む梟の黒き毒に染みたるこゑ 街と木木とにひびき わが耳を襲ひて堪へがたし わが耳は夜陰に痛みて 心にうつる君が影像を悲しみ窺ふ かろくして責なきは あしき鳥の性なり ――きいたか、きいたか ぼろすけぼうぼう―― おのが声のかしましき反響によろこび 友より友に伝説をつたへてほこる 梟の族、あしきともがら われは彼等よりも強しとおもへど 彼等はわれよりも多弁にして 暗示に富みたる眼と、物を蔵する言語とを有せり さればかろくして責なき その声のひびきのなやましさよ 聞くに堪へざる俗調は 君とわれとの心を取りて不倫と滑稽との境に擬せむとす のろはれたるもの 梟の族、あしきともがらよ されどわが心を狂ほしむるは むしろかかるおろかしきなやましさなり 声は又も来る、又も来る ――きいたか、きいたか ぼろすけぼうぼう―― 大正元・一〇

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