十二ヶ月

竹内浩三

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

一月―― 凍てた空気に灯がついた 電線が口笛を吹いて 紙くずが舞上った 木の葉が鳴った スチュウがノドを流れた 二月―― 丸い大きな灰色の屋根 真白い平な地面 つけっぱなしのラムプが 低うく地に落ちて 白が灰色に変った 三月―― 灰色はコバルトに変り 白は茶色に変った 手を開けたら 汗のにおいが少しした 四月―― ごらん おたまじゃくしを 白い雲を そして若い緑を 五月―― 太陽がクルッと転った アルコホルが蒸発して ひばりが落ちた 虫が少し蠢いてみて また地にもぐりこんで にやりとした 六月―― 少年が丘を登って 苺を見つけて それを口へ入れ なみだぐんだ 七月―― 海が白い歯を見せ 女が胸のふくらみを現す 入道雲が怒りを示せば 男はそっと手をさしのべる ボートがゆれた 八月―― ウエハースがべとついて クリームが溶けはじめた その香をしたった蟻が 畳の間におちこんで 蟻の世界に椿事が起り 蝉が松でジーッとないた 九月―― 石を投げれば ボアーンと響きそうな 円い月が だまって ひとりで 電信柱の変圧器に ひっかかっていた 十月―― ゲラゲラ笑っていた男が 白い歯を収め 笑いを止めて ひたいにシワをよせ 何事か想い始めた 炭だわらの陰でコオロギが鳴いた 十一月―― 空は高かった そして青かった しかし 俺はさみしかった 十二月―― ラムプがじーと鳴って 灯油の終りを告げた 凩が戸をならして 「来年」のしのびやかな 足音も聞えた

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

十二ヶ月の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

十二ヶ月に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる