田舎の絵本
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-未知なる人の筆になるを披き見て
林では 春の落葉を踏んで 三尺帶をしめた鼠の子供が遊んで
ゐる
襟元の赤いのが女の子供 空には遠く斑な雪の山 民家の屋根
が沈んで見える
私の披いた繪本のなかで 田舍の鼠の言葉がききとれる 響い
てゐる あの耳馴れた親しい方言 その身內で田舍人の骨が
がらがら鳴つてゐる
信濃なる想ひびとよ かつて 私の靑春はこれらの土地を踏み
ふみ 何物の空を頂いてか 久しく思惟をその紅い襟元にと
どめてきたものを
私の心は老いない 果して あれら 喪はれ去つた時は何であ
つたらう
田舍の親しい骨よ
この鼠にもなれなかつた私は 今もかうして披いて見てゐる
一枚 二枚 田舎の繪本······
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