世界
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世界は星と人とより成る。
空高く、
とこしへに無聲なるいつの時より、
空高く、
奧深くして風荒るる天上のいづこの庭に、
空高く、
いづれの太陽を央にして、
ものに譬ふれば
火焔の蜂の巣をさながらに、
勢力彌漫したる虚空の大壯觀中、
幾千萬の不可思議にして壯烈なる
星の巣立は飛散す。
星ありき、何の世とは知らねど、蜜蜂の如く、
これら衆星をまき散しぬ。
これ、今、金色の精氣の中、
花に、籬に、園生の上に飛びかひて、
夜は輝き、晝は隱るる
久遠の天の運行に、
往きつ、離りつ、はた戻りつ、とこしへに囘轉す、
母なる星のめぐりを。
嗚呼熾烈なる光明の、狂へる如き大旋轉よ。
白色の大靜寂、これを領す。
うまれの火爐を中心に、狂ひつ、とどろきつ、
𢌞轉する金色の天體は、宇宙の則に從ふなり。
嗚呼大法に從ひて、而も無邊なる大群飛よ。
焔の落葉か、燃え上る草むらか、
更に更に遠く進み、更に更に高く跳り、
發生し、死滅し、はた増殖して、
輝くもの、燃ゆるもの、
さながら似たり、
寶冠のおもてを飾る珠の光に。
かくて地球も其昔、いつとは知らず在天の
大寶冠より滴りたる夜光の玉のひとひかり。
緩慢にして遲鈍なる寒氣、鉛の色の濕りたる空氣は
この炎々として猛烈なる火氣を靜めて、
大洋の水、まづ其面を曇らせ、
山岳、つぎに其氷りたる脊椎を擡げ、
森林は、底土の下より動るぎ出で、
朱に染みて骨々しき猛獸の怒號、爭鬪に戰き、
天災、東より西へ流れて、
大陸は作られ、また滅びぬ。
かしこ、旋風の怒をなして渦卷くところ、
狂瀾怒濤の上、岬はつきいでぬ。
突進し、震蕩し、顛覆する天地の苦鬪、
漸くにして其狂亂を收むるや、
影と爭との幾千年後、
徐ろに人は宇宙の鏡に顯はる。
彼はじめより主たり、
忽然として
其上半身を直立し、其額を上げ、
萬物の主たりと名乘る、かくて其祖より離れぬ。
晝あり夜あるこの地球は、
はるばると限なく
東西にひろがり、
はじめの思想、はじめの飛躍は、
人間の
至上なる腦の奧より
日の下にあらはれぬ。
嗚呼、思想よ、
恐ろしき飛躍なる哉、火焔の散らふに似たり。
其爭ふや赤く、其和するや緑に、
天上の星光、雲を破る如く、
はてしらぬ原にかがやき、
火の如くなりて虚空に轉じ、
山を攀ぢ、川を照らし、
新光明を隈なく放ちぬ、
海より海へと、靜寂の邦の上に。
されどこの金色の喧囂の中、
いつも空にある如く、今も空にある如き
大諧音の終に起らむを望みて、
さながら
日輪の如く、
あらはれ、のぼるものは、
此世の民の中より出づる
天才なり。
火焔の心を有し、蜜の唇を有して、
天才は事も無げに、「道」を語りぬ。
苦悶の闇に迷ふ凡百のともがら、
皆この大思想の巣にかへり來て、
切なる求道、狂ほしき疑惑の
滿干の波はひたせども、
此突如たる光明に影も停まりつ、
萬の物質に新しき震動は傳り、
水も、森も、山岳も、山風に、濱風に、
身の輕きをおぼえて、
波自から跳り、枝自から飛びて、
白き泉の接吻に岩も動きぬ。
萬物其基よりして革りぬ。
眞と善と、愛と美と醜と、
水火が作る微妙なる結合は、
宇宙の精神の經緯となりて、
愛する物が織りなせる世のすべては、
終に天上の則に從つて生く。
世界は星と人とより成る。
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