愁のむろ

上田敏

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胸にある青き愁よ、 さいはひを求めてやまず、 よよと泣く月の光に 夢青く力無けれど。 この青き愁の室に さしよりて透見をすれば、 ぐらす戸の緑のあなた、 月を浴び、玻璃に覆はれ、 生ひ繁る葉もの、花もの、 夢の如く、不動に立ちて 宵よひは、忘我の影を 愛執の薔薇におとす。 水は、はた、ゆるく噴きいで、 薄曇る不斷の息に、 月影と空とをまぜて、 夢の如く節もかはらず。

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