相子

山之口貘

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どさくさまぎれの汽車にのっていて ぼくは金入を掏られたのだ 掏られてふんがいしていると ふんがいしているじぶんのことが おかしくなってふき出したくなって来た まあそうふんがいしなさんなと とまな自分に言ってやりたくなったのだ もっとも金入にいれておくほどの お金なんぞはなかったが 金入のなかはみんなの名刺ばかりで はち切れそうにふくらんでいたのだ いまごろは掏った奴もまた とんまな顔つきをして 名刺ばかりのつまった金入に ふんがいしているのかも知れないのだ 奴はきっと 鉄橋のうえあたりに来て そっとその金入を 窓外に投げ棄てたのかも知れないのだ

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