弁当

山之口貘

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改札口の行列のなかにしゃがんでいて 弁当ひらいている眼の前に 青んぶくれの顔が立ち止まった ごはんの粒々にくるまった 一本の薩摩芋を彼にあたえて 食べかけているところへまた立ち止まった 戦災孤児か欠食児童なのか 霜降りの服のがふたりなのだ 一本づつあたえるとひったくるようにして埃のなかへ消え失せた 食べかけるとまた止まった 青んぶくれの先程のだが 見合わせたはずみに目礼を落してそのまま彼はそれてしまった そこで僕はいそいで 残りのものを食べおわった 思えばたがいに素直すぎて みすぼらしくなったのか 敗戦国の弁当そのものが ありのままでも食い足りないのだが

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