玄関

山之口貘

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呼び鈴の音にうなされて あわてて玄関に出てみると あるばいとなんですがと云うわけなのだ まあ間に合っていますと断わると ひとつでもいいんですが 買って下さいなのだ またにして下さいと尻込みすると 見るだけだって 見て下さいなのだが お金がないのでは見るのもいやなので 首を横にうち振ったのだ かれは風呂敷包を小脇にかかえなおして 玄関を見廻していたのだが こんな桧づくりの大きな家に住んでいて ひとつぽっちも買わないなんて法が あるもんですかと吐き出したのだ いかにもぼくの家みたいで まるでもっての外みたいだ

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