萌芽
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空家のやうにがらんとしてゐる夜である
誰かそこにゐて
これがあるか といふやうに
小指を僕に示して見せる相手があるならば
ないんだよ と即答出來る自信で僕の胸はいつぱいなのである
蟹の眼のやうに僕は眼をとんがらせて夜ぢゆう小指のシノニムを夢見てゐる
公設市場で葱を指ざしてゐたあの女
追ひついて行つて横目で見てやつたときのあの女
女や女を
または女を思ひ出しながら
僕は夢見てゐる
今度といふ今度こそは女をみつけ次第
その場にひざまづいて僕は一言さゝげたいのである
女さまよ と
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