灸をすえる

山之口貘

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ひんまがったひどい腰曲りで 竹の杖にすがりながら 草履ばきのひからびたその大足を ひと足ひと足と運んできたのが 西の家の老婆なのだ 老婆は杖を戸袋の脇に立てかけると はなしに聞いて来たのだがと言いながら 縁側にあがって坐り込み お灸をすえてくれまいかと言うわけなのだ 噂によればなにしろ 虱たかりの老婆なので ぞっとしないではいられなかったのだが とにかく線香に火をつけたのだ 老婆がやがて肌をぬいで 背なかをこちらに向けると おそるおそるぼくは膝をすすめ ひからびた背なかを見廻したのだが いまのうちにと急いで 孔穴を探りそこに 急いで艾を立て 急いで線香の火をうつしたのだ

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