落し水

横瀬夜雨

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夏野の露の朝ぼらけ 靈夢はさめにけり 喚べどかへらぬ隼の 深山の雲に鳴くと見て 宵の燎火白々と 土橋の爪に消えのこり 蜘手に開く小田の路 野は露ならぬ草も無し 堰に落ち込む落し水 秋は小川に迫り來て 黒髮山は朝曇 曇りて北に見ゆれども 花は子となるうす櫻 彌生をかけて夏草の 霧の深きを踏む程の 命は神のゆるしけむに 何しに人の今日死して 雲の薄きに泣かすらむ われは常陸の野にして 風に吹かるゝ身なるもの 白日の光かくれたる 石の柩の底深う 夕の影に伴ひて 人はくらきにかくれけり

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