電灯

与謝野晶子

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狭い書斎の電灯よ、 紐で縛られ、さかさまに 吊り下げられた電灯よ、 わたしと共に十二時を 越してますます目が冴える 不眠症なる電灯よ。 わたしの夜の太陽よ、 たつた一つの電灯よ、 わたしの暗い心から 吐息と共に込み上げる 思想の水を導いて 机にてらす電灯よ。 そなたの顔も青白い、 わたしの顔も青白い。 地下室に似る沈黙に、 気は張り詰めて居ながらも、 ちらと戦く電灯よ、 わたしも稀に身をゆする。 夜は冷たく更けてゆく。 何とも知らぬ不安さよ、 近づく朝を怖れるか、 才の終りを予知するか、 女ごころと電灯と じつと寂しく聴き入れば、 死を隠したる片隅の 陰気な蔭のくらがりに、 柱時計の意地わるが 人の仕事と命とに 差引つけて、こつ、こつと 算盤を弾く球の音。

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