自問自答

与謝野晶子

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「我」とは何か、斯く問へば 物みな急に後込し、 あたりは白く静まりぬ。 いとよし、答ふる声なくば みづから内に事問はん。 「我」とは何か、斯く問へば 愛、憎、喜、怒と名のりつつ 四人の女あらはれぬ。 また智と信と名のりつつ 二人の男あらはれぬ。 われは其等をうち眺め、 しばらくありてつぶやきぬ。 「心の中のもののけよ、 そは皆われに映りたる 世と他人との姿なり。 知らんとするは、ほだされず 模ねず、雑らず、従はぬ、 初生本来の我なるを、 消えよ」と云へば、諸声に 泣き、憤り、罵りぬ。 今こそわれは冷かに いとよく我を見得るなれ。 「我」とは何か、答へぬも まことあはれや、唖にして、 踊を知れる肉なれば。

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