紅顔の死
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江湾鎮の西の方
かの塹壕に何を見る。
行けど行けども敵の死屍、
折れ重なれる敵の死屍。
中に一きは哀しきは
学生隊の二百人。
十七八の若さなり、
二十歳を出たる顔も無し。
彼等、やさしき母あらん、
その母如何に是れを見ん。
支那の習ひに、美くしき
許嫁さへあるならん。
彼等すこしく書を読めり、
世界の事も知りたらん。
国の和平を希ひたる
孫中山の名も知らん。
誰れぞ、彼等を欺きて、
そのうら若き純情に、
善き隣なる日本をば
侮るべしと教へしは。
誰れぞ、彼等を唆かし、
筆を剣に代へしめて、
若き命を、此春の
梅に先だち散らせるは。
十九路軍の総司令
蔡廷鍇の愚かさよ、
今日の中にも亡ぶべき
己れの軍を知らざりき。
江湾鎮の西の方
かの塹壕に何を見る。
泥と血を浴び斃れたる
紅顔の子の二百人。
(右、読売新聞記者安藤覺氏の上海通信を読み感動して作る。)
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