森の新秋

与謝野晶子

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今日の森は涼し、 わたり行く風の音 はらはらと旗を振る。 濃いお納戸の空、 上の山より斜めに 遠き地平にまで晴れたり。 まろく白き雲ひとつ 帆の如くに浮び出で、 その空も海に似る。 森の木は皆高し、 ぶな、黒樺、稀れに赤松、 樹脂の香の爽かさ。 太陽は近き幹をすべり、 我が凭る椅子の脚にも 手を伸べて金を塗る。 かのぶなの枝に巣あり、 何の小鳥ぞ、胸は朱、 鳴かずして二羽帰る。 紅萩、みじかき茅、 りんだうの紫の花、 猶濡れたれば行かじ。 我れは屋前の椅子に、 読みさせる書をまた開く。 秋は今日森に満つ。

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