〔無題〕(『晶子詩篇全集拾遺』収録・同題第38篇)

与謝野晶子

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うすくれなゐの薔薇さきぬ、 妬ましきまで、若やかに 力こもりて笑む花よ、 人の持つより熱き血を 自然の胸に得し花か。 うすくれなゐの薔薇さきぬ、 この花を見て、傷ましき、 はた恨めしき思出の 何一つだに無きことも 先づこそ我に嬉しけれ。 うすくれなゐの薔薇さきぬ、 人よ、来て訪へ、この日頃。 我等が交す言の葉に 燃ゆる命の有り無しは 花に比べて知りぬべし。 うすくれなゐの薔薇さきぬ、 この美くしく清らなる、 この尊げに匂ひたる、 花の証のある限り、 愛よ、そなたを我れ頼む。

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