〔無題〕(『晶子詩篇全集拾遺』収録・同題第56篇)

与謝野晶子

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わたしの一人の友が 逢ふたびに話す、 大正六年の颱風に 千葉街道の電柱が 一斉に、行儀よく、 濡れながら、 同じ方向へ倒れて居たことを、 わたしは、その快い話から、 颱風を憎まない。 それが破壊で無くて 新しい展開であるのを思ふと、 颱風を愛したくさへなる。 おお、一切の煩瑣な制約を掃蕩する 天来の清潔法である颱風。

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