〔無題〕(『晶子詩篇全集拾遺』収録・同題第99篇)
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しら布に覆へる小箱、
三等車より下り来たる。
黙黙として抱だきたるは
羽織袴の青年。
名誉の死者の弟か。
知らぬ他国の我れなれど、
この駅に来合せて、
人人の後ろより、
手を合せつつ見送れば
涙先づ落つ。
駅のそとには
一すぢの旗動き、
兵士、友人、縁者の一群
粛然と遺骨の箱に従ふ。
「万歳」の声も無し。
我れは思ふ、
などか此の尊き戦死者の霊を
此のふるさとに送るに
一等車を以てせざりしや。
我が涙また落つ。
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