丹羽夫人に

与謝野晶子

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伊弉諾と伊弉冉の神、 導きて、うら若草の、 妹と背の君の入るてふ、 甲子園、ホテルの宵を、 遥かにも思ひやりつつ、 浮びくる唐の詩人の 宮詞など、口に載せつつ、 幸ひの身にも及ぶと 云ふ如く、我れ楽みき。 あることか、二三日のちの 消息は、新男君、 うちつけに、その夜中より 病して、妹背の契り、 空しくも、うたかたとなり、 永久に帰らぬ国へ、 翌る日の十七日に、 赴くと、逝れましぬと、 云ふものか、報ずるものか。 あさましと、云ふにも過ぎぬ。 はかなしと云ふきはならず。 喪の人と、この時すでに、 新妻の美喜子の君は なりたまひ、つるばみごろも、 深く染め、籠りたまふと、 云ふことを、誰れか思はん。 涙ゆゑ濡れまろがりし ひたひ髪、そのまみ見ゆれ。 哀愁にとざされはてし、 二方のたらちねの君、 思はれて、虚無の隣の 人の世を、ひたすら歎く。

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