大荒磯崎にて

与謝野晶子

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海が急に膨れ上がり、 起ち上がり、 前脚を上げた 千匹の大馬になつて まつしぐらに押寄せる。 一刹那、背を乾してゐた 岩と云ふ岩が 身構へをする隙も無く、 だ、だ、だ、だ、ど、どおん、 海は岩の上に倒れかかる。 磯は忽ち一面、 銀の溶液で掩はれる。 やがて其れが滑り落ちる時、 真珠を飾つた雪白の絹で さつと撫でられぬ岩も無い。 一つの紫色をした岩の上には、 波の中の月桂樹―― 緑の昆布が一つ捧げられる。 飛沫と爆音との彼方に、 海はまた遠退いて行く。

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