五月雨と私

与謝野晶子

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ああ、さみだれよ、昨日まで、 そなたを憎いと思つてた。 魔障の雲がはびこつて 地を亡ぼそと降るやうに。 もし、さみだれが世に絶えて 唯だ乾く日のつづきなば、 都も、山も、花園も、 サハラの沙となるであろ。 恋を命とする身には 涙の添ひてうらがなし。 空を恋路にたとへなば、 そのさみだれはため涙。 降れ、しとしとと、しとしとと、 赤をまじへた、温かい 黒の中から、さみだれよ、 網形に引け、銀の糸。 ああ、さみだれよ、そなたのみ、 わが名も骨も朽ちる日に、 埋れた墓を洗ひ出し、 涙の手もて拭ふのは。

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