産の床

与謝野晶子

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甘睡せる我が枕辺に 音も無く物ぞ来れる。 静かなる胸を叩きて 傍らに寄り添ふけはひ。 見開きて見る目に映る 影ならず、黄色の衣 まばゆくも匂へるを着て 物は今足のまはりを 往来しぬ。あさましき物 見じとして心ふたげば 物は消ゆ。嬉しと思ひ 目ひらけば又この度は 緋のころも袖うち振て 魔ぞ立てる。黄色の物と 緋の物とこもごも見えつ。 且つ見れば彼方向く時 黄色にて、こなたの袖は 赤なりき。物がうち振る 袖の間にしら鳥の雛 その如き真白き影の ふと見えぬ。黄色の袖と 緋の袖とやがて消し時 残りしはしら鳥の雛。 わが悩み早も残らず、 子よ、汝を生みし夕の うら若き母のまぼろし。

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