真実へ

与謝野晶子

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わが暫く立ちて沈吟せしは 三筋ある岐れ路の中程なりき。 一つの路は崎嶇たる 石山の巓に攀ぢ登り、 一つの路は暗き大野の 扁柏の森の奥に迷ひ、 一つの路は河に沿ひて 平沙の上を滑り行けり。 われは幾度か引返さんとしぬ、 来し方の道には 人間三月の花開き、 紫の霞、 金色の太陽、 甘き花の香、 柔かきそよ風、 われは唯だ幸ひの中に酔ひしかば。 されど今は行かん、 かの高き石山の彼方、 あはれ其処にこそ 猶我を生かす路はあらめ。 わが願ふは最早安息にあらず、 夢にあらず、思出にあらず、 よしや、足に血は流るとも、 一歩一歩、真実へ近づかん。

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