真珠貝

与謝野晶子

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真珠の貝は常に泣く。 人こそ知らね、大海は 風吹かぬ日も浪立てば、 浪に揺られて貝の身の 処さだめず伏しまろび、 千尋の底に常に泣く。 まして、たまたま目に見えぬ 小さき砂の貝に入り 浪に揺らるる度ごとに 敏く優しき身を刺せば、 避くる由なき苦しさに 貝は悶えて常に泣く。 忍びて泣けど、折折に 涙は身よりにじみ出で、 貝に籠れる一点の 小さき砂をうるほせば、 清く切なきその涙 はかなき砂を掩ひつつ、 日ごとに玉と変れども、 貝は転びて常に泣く。 東に昇る「あけぼの」は その温き薔薇色を、 夜行く月は水色を、 虹は不思議の輝きを、 ともに空より投げかけて、 砂は真珠となりゆけど、 それとも知らず、貝の身は 浪に揺られて常に泣く。

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